成川ジローの愛すべき○○ブログ(ネタバレあり)

管理人である成川ジローが愛すべき映画やアニメを格闘技、プロレスに絡めたりもして語るブログ。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

ゆれる

 「真実はいつもひとつ!」って言う有名なコナンの名言が大嫌い。たぶん、それを書いた作者本人はわかってるんだろうけど、この言葉のせいで人を単純に判断してしまうことを助長してしまっている気がする。人はそんな単純ではない。例えば、ある人を殺してしまった理由を「親しい人を奪われた恨み」とかに単純に固定してしまうのを幇助している。何か大変な事をしてしまった人を「病んでるから」とか、単純に記号化してしまうのを幇助してしまっている。。もの凄いたくさんの要素が絡まってできたものを、らしい言葉で一つにまとめてしまっているのを肯定してしまっている気がする。真実はひとうじゃない。人間の心理とかも因果とかも含めて、そんな単純であるはずがないのに……。もしこのコナンの言葉を疑問に思わない人は、言葉の持つ力の強さ弱さにもっと注目して欲しい。
 コナンの言葉を前提としてしまうと、確実に判断を曇らせてしまうんですよ。放棄される考え、可能性がたくさんある。まぁ世の中単純に考えとくくらいがちょうど良い場合が90%くらい占めてますけどね。めんどうだから、それで良いっちゃそれで良い。でもそうじゃまずい事もあるわけで、今回の映画の中にも「自分が人殺しの弟になるのが嫌なだけだろ」と言う言葉が出てきますが、「だけ」な訳無いんです。それがメインの理由だとしても、複雑な理由がたくさんあるわけです。
 真実は人の数だけ、無数にある。あるいは、人の数以上に、無限にあるものだ。そういう風なことをコナンが言ってくれれば良かったのに。
「真実はいつもひとつ!」
 できれば自分はこの言葉を子供に教えたくはない。「真実は一つだけ」とは言いたくない。

邦題『ゆれる』
2006/日本/119分
監督 西川美和
出演 オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子、蟹江敬三、木村祐一

ゆれる

 前文が長くなったけど、この映画は一応真実を捜し求める形の映画にはなってるから、全く関係ないって訳でもないはず。兄と弟の見えているもののすれ違いはあるし。この映画見たら「真実はいつもひとつ!」なんて言ってらんないだろと。

 故郷を離れて東京で写真家をしている弟の猛と実家のガソリンスタンド経営を継いでいる兄の稔。母親の法事で猛は帰省するも親父には歓迎されず、イマイチ場違いな空気を感じるが、兄は疎遠だったことを感じさせず暖かく迎えてくれた。そのガソリンスタンドで猛は幼馴染の智恵子と再会し共に一夜を過ごし、翌日には猛と稔と智恵子の三人で蓮美渓谷へ遊びに行く。兄の智恵子への思いになんとなく気がついていた猛は一人離れて写真を撮っていたが、そのとき智恵子が吊橋から落下。近くにいたのは稔だけであり、それは事故だったのか、事件だったのか、真相を突き止めるため稔は裁判に赴くことになる。

 上手くあらすじを説明できているかどうかわからないが、とにかくこの映画は楽しい映画ではなく重い。そのとき起きた真実を探りながら、主人公猛の心理や兄稔との関係を描いている。その描写が素晴らしい。『ゆれる』という題名の通り、猛と稔の関係もゆれるし、猛自身の心も稔の心もゆれる。親父の心もゆれるし、親父と叔父の関係もゆれる。もちろん橋もゆれるし、見ている自分の心もゆさぶられた。泣かなかったけれど、涙を流すだけが感動じゃないだろう。感動した。テーマは違うけど、『ある子供』並に自分はゆさぶられた。えぐられた感じ。


 田舎を出て東京で成功している弟、猛。オダギリジョー。

おだぎり

 なんかもうオダギリってこういう格好の役に固定されてきている気がする。自由人とか芸術家肌な人というかなんというか、自分が見ているオダギリがそんな風なのばっかりなだけだろうか?実際そういう人物なんじゃないかとも思うんだけど。今回もだいたいそんな感じ。上手いけど。兄の足に酒がこぼれるのを見つめるシーンはこの弟と兄をしっかり分けた良いシーンだと思う。そんときのオダギリの冷めた表情が良い。そして昔のフィルムを見るシーンからラストの泣き顔は反則的に良かったわ。弟って感じはした(笑


 田舎から出ることの無かった兄、稔。香川照之。

香川

 いつもいつも自分の好みの演技をしてくれる香川照之。今回は好みではなかったが、常に内に何かを押さえ込んでるおうな演技がすごい怖かった。ちょっと狂気染みたものも感じた。素晴らしい役者さん。全体的に凄い良い。例えば、猛に「結婚しなきゃ」見たいな事言われたときの「……なんだよ……それ」って言うシーンはタイトルどおりゆれてるし。あと稔役のオダギリジョー同様、ラストのあの溜めと表情。溜めは編集か。あの表情。深すぎてどういう意味でのあの表情だったのか、凄い考えさせられた。スンバらしい。兄って感じはした(笑


 二人の幼馴染で事件のキーパーソン、美智子。真木よう子。

 真木

 まぁ特に普通だったかなと(^^; 可哀想な人物なんだよね。境遇もそうだけど色々と。この人が死んでしまった事件なんだけど話の主題がこの人から逸れてるから、扱いも可哀想だとは思う。事件の被害者である意味作品の被害者でもある。仕方無いことなんだけれども。
 偏見かもしれないけど、あんな吊橋の上でガタガタ震えてしがみ付いてく来られたら男の俺から見ても嫌だわ。


 親父。伊武雅刀。

伊武

 古いタイプの人間の親父。まあ良い演技してたと思う。オダギリとの喧嘩シーンとか、蟹江との喧嘩シーンとかのこの人の言い分聞く限りでは本当に自分の嫌いな親父。大変な立場なんだけどね。親父として裁判を見届けないのもなんかなぁ……って思った。


 弁護士をやっている叔父、修。蟹江敬三。

蟹江

 良いキャラしてた。なんか『アカルイミライ』の藤竜也に似ている気がしたけど、オダギリジョーが出ているせいだろう。


 検察官。木村祐一。

木村

 ホントにこんな検察官いるのかよwwwいたら嫌だな。ぶん殴りたくなっちゃうだろ。木村祐一の演技的には問題無かったと思うけど、このキャラそのものにちょっと問題があるんじゃないだろうか。あとキム兄はケンコバに似てる。


 稔を慕うガソリンスタンドの後輩、洋平。新井浩文。

新井

 こいつが地味に凄い良かった。前半は脇役だと思ってたら、後半でぐぐいのぐいと出てきた。見終わって調べてみたら、『GO』の朝鮮高校の友人。見返してみればそういえば!ってなる。


 役者は全体的にも良かった。合っていた。
 西川美和監督は『ディア・ドクター』が初見で、このブログでもレビューしているけど凄い良くて、この『ゆれる』も色んな人に勧められたから満を持して見てみたんだが、本当に女性監督なの?って言うくらい男の描写が上手い。凄い人だ。そして丁寧で、構図とかも印象的なシーンの撮り方もイチイチ上手い。『ハート・ロッカー』のキャサリン・ビグローよりも素晴らしい女性映画監督だと思う。
 
 お互いに相手に無い物を持つ兄弟。自分自身がそうだからかもしれないけど、「どうして俺とお前はこんなに違うの?」と言う香川の台詞には何か心にくるものがあった。大抵の場合、それを言われた側も同じこと思っているんだけどね。お互いに羨ましがってるというか。特に香川の演技のそこかしこにこの台詞を匂わせるようなものを感じた。

背中越しの会話

 この背中越しの会話とか、ちょうど智恵子との事があったので猛は気まずい。そして実は全部想像できてた上でそれを確認して、そして気がついてないふりをしながらも責めてる。切ない。ここらへんの空気を凄い良く演出できてた。

 他にも、稔の足に酒がこぼれるシーンや、稔が猛のポケットにお金を入れるシーン、橋の上の兄を落ち着かせながらさりげなく腕の傷を隠しシーンとかの兄弟の見せ方とか、蓮美渓谷での3人の会話シーンのさりげない緊張感とか、会話室の撮り方とか見てて、褒めてばっかりだけど本当にこの西川美和監督ってのは凄い人だなって思う。

 事件をどう捉えるか。自分は猛の証言は嘘ではないが、昔のフィルムを見て「稔の腕の傷は手を伸ばして実際に美智子の腕をつかめたけど滑り落ちてしまったときにできた傷であり、争ったりして出来た傷とかじゃない。」と思いなおすことができて、自分のせいで優しかった兄を失ってしまったことに気づいて泣いたと捉えた。そうすると兄があまりにも可哀想な目にあっていて、弟が本当に愚かだったということにもなってしまう気がするが。
 それから、ラストの稔の見せた笑顔は、自分は全てを許す「しょうがねえな」って感じにも取れたんだけど、どうなんだろう。エンディングテーマの雰囲気からすると、悪い感じはしないんだけど、監督はこういう見ている側に答えを委ねる形のエンディングが好きなのかな?まぁ見た人の数だけ真実はあるってことで。

 良い映画と言ってしまって良いのかわからんが、とりあえず丁寧な出来で演出が素晴らしい映画。話は『ディア・ドクター』の方が好きだけど、演出がどちらもほんとうに秀逸。


名場面
○背中越しの兄との会話
○蟹江敬三の弁護
○会話室での腹を割った会話
○8mmフィルムを見るシーン
○ラストシーン

名台詞
○どうして俺とお前はこんなに違うの?
○自分が人殺しの弟になるのが嫌なだけだろ
○僕は元の、僕の兄貴を取り戻すために、自分の人生を賭けて本当のことを話そうと思います

評価
★★★★☆
(★ 五つが最高。☆は0,5点)

予告編↓


ゆれる [DVD]ゆれる [DVD]
(2007/02/23)
オダギリジョー香川照之

商品詳細を見る



P.S.
 主観客観を超越した紛れも無い真実が存在するとして「真実はいつもひとつ!」と言う場合、それは運命論者や決定論者の言う「永遠の相」(だっけ?)でなきゃ認識できない、人間には手の届かない領域。だから「作者」=「神」=「永遠の相」となって、漫画の中でならある意味もっともだな。
 ちなみに自分は運命論者とか決定論者と言うより、運命論・決定論を正しいと思う人です。その因果関係により導かれる未来が間違ってないと思うだけで、自分がこれから先いつ結婚していつ死んでみたいな事が全て決まっていると考えられる訳じゃない。この立場を説明するとき本当になんて言えば上手く伝わるか悩むんだけど、たぶん、
「因果関係ってものはあると思うし、だからこれから起こることってのも自ずと導かれるとは思うけど、因果関係とか細かすぎて人間である自分が把握できる事じゃないから、実際どっちでも良い。これから先の事が決まっているのかもしれないけど、何も変わらない」
 と言うこと。凄い簡単に言えば「なるようにしかならない」と言えるのかな?諦観でも思考停止でもな無い。
スポンサーサイト

テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画

  1. 2010/06/10(木) 16:29:02|
  2. 映画-邦画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<K-20 怪人二十面相・伝 | ホーム | 自虐の歌>>

コメント

俺はラストの笑顔、逆に解釈したな
「香川さん、怖ッ!」と思った
まあどっちともとれるよね素晴らしい役者です

キム兄は俺はありだと思うw
すげーやらしいんだけどコミカルなところがバランス悪いっちゃ悪いかもしれないけどちょっと息抜きになった

新井浩文は青い春とか松ヶ根乱射事件とかが代表作かな?俺がたんに好きなだけかもしれないが
ヒリヒリして爆発しそうな役をやらすと上手い

あと何気にこの映画、無音にして印象強めたりとかサウンドデザインが秀逸だと思う
  1. 2010/06/11(金) 00:54:37 |
  2. URL |
  3. かと #-
  4. [ 編集 ]

この作品の香川さんは

 ラストに限らず怖いです。ラストの笑顔、そっちにも十分見えるんですけどね。そしたらもうマジで怖い。エンディングテーマが無かったら確実にそっちに見えて、後味というか「怖い」で終わる映画だったでしょう。

 キム兄いやらしいっすよねー。『ポリス・ストーリー』の弁護士以上にいやらしかった。キム兄自体は悪くないです。

 どっちも見てないですけど、こんな迫力あって緊張感出せる人だと思ってませんでしたよ。実際半分くらいまで空気ですし。確かに上手い。

 静けさと言うか、静かな感じの音は『ディア・ドクター』もそうでしたけど、上手いですよね。丁寧というべきか、良い仕事してます。
  1. 2010/06/11(金) 18:40:41 |
  2. URL |
  3. 成川ジロー #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://nestofdragon.blog130.fc2.com/tb.php/65-cda4508d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

成川ジロー

Author:成川ジロー
暴力は嫌い。
お酒も嫌い。
女性に弱い。
お金は無い。
誠意はある。

評価は
★=1
☆=0,5
五つ星=★★★★★が最高評価です。

yahoo映画も登録してます↓
http://my.movies.yahoo.co.jp/profile-h5Bi36CCZy9hq1y7A4EjP_5.bwtX

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (4)
映画 (7)
演劇 (2)
プロレス (0)
格闘技 (0)
映画-香港 (24)
映画-邦画 (22)
映画-洋画 (33)
映画-その他 (11)
目次 (6)
プロレス-WWE(WWF) (0)
格闘技-ボクシング (0)
格闘技-K-1 (0)
格闘技-総合 (0)
小説 (1)
アニメ (11)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。