成川ジローの愛すべき○○ブログ(ネタバレあり)

管理人である成川ジローが愛すべき映画やアニメを格闘技、プロレスに絡めたりもして語るブログ。

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悪人

 高田馬場にある早稲田松竹にて『悪人』と『ヒーローショー』の二本立てでやっていたのを鑑賞。見たいみたいと思っていながらも映画館に行き損ねていたので、劇場で見る機会に恵まれてよかった。かなり期待して行った。


邦題『悪人』
2010/日本/139分
監督 李相日
出演 妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、塩見三省、池内万作、光石研、余貴美子、松尾スズキ、永山絢斗、樹木希林、柄本明

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 土木作業員である清水祐一は保険外交員の石橋佳乃と出会い系サイトで出会い、援助交際の様なことをやっていた。ある日清水は佳乃に会いに来るが、佳乃は清水を馬鹿にするかのように目の前で別の男、大学生である増尾圭吾の車に乗り、何処かへ行ってしまう。翌日、死体となって発見された佳乃。行方をくらましている増尾が犯人と疑われ、警察の捜査が続けられるも、増尾が見つかり真犯人が別にいる事がわかり、今度は清水に疑いがかけられる。その頃清水は出会い系サイトで知り合った別の女性、紳士服店の店員である馬込光代と出会い、最初こそ酷い出会いとなってしまったものの、お互いの心情を吐露し、心を通わせていた。しかし清水は自分に嫌疑がかけられている事を知ると強引に光代を連れて逃避行をする。

 『69 sixty nine』や『スクラップ・ヘブン』、『フラガール』の李相日監督による、吉田修一の小説『悪人』の映画化。この映画と『告白』が去年の邦画のツートップだと思う。どっちも他を引き離したバツグンの良さがある。まぁ他って言ってもあんまり見てない気もするけどね(^^;見たとしても『十三人の刺客』とか、毛色の違うものだし。この二つは簡単に言ってしまえばかなり重いドラマ。個人的には『告白』の方が自分にはかなりはまっていて好きなんだけど、自分の周りにはこっちの方が好きな人が多いっぽい。とても丁寧で良い作品であることはわかる。こっちの方がとても王道な作品で、あっちは異色作ではあるから、『告白』を受けつけない人がいるってのもわかる。多分万人に良いと思われるのが『悪人』で、一部に熱狂的に好かれるのが『告白』なんだろう。あと、何でか『告白』の方はもう一回見たいと思うんだけど、こっちは一回見たいとは思わないんだよね。

 ポスターにはこの映画のテーマとも言える言葉、「誰が本当の"悪人"なのか?」と書かれている。もちろん一番その問題に晒されるのは主人公なんだけど、この映画に出てくるのはある意味ほとんどの人間が悪人と言える。誰もが悪人になりうる、そしてそういう人のエゴを炙り出したような描き方をしている。人の悪の部分を真っ直ぐ描いた秀作だと思う。

 そんな映画の中心に置かれる主人公の清水祐一。演じるのは妻夫木聡。

妻夫木

 画像暗くてすいません。援助交際相手の佳乃を結果的に殺してしまう。悪人と言うより、ひたすら運の無い、可哀想な人と言う印象が強い。何をしても上手くいかない貧乏くじを引きまくるときって誰にでもあると思うんだけど、そういうのが一気に来て、上手く捌く事ができずに奈落に落ちてしまった感じ。まだ若いのに車くらいしか遊ぶものが無く、金があるわけでもなく、家の状況的に何かを試す事もできず、夢があるわけでもなく、にっちもさっちもいかない。このまま年をとると『最強伝説黒沢』になってしまうだろう状況。光代の存在だけが救いだったかな。この人がしたことは殺人であり、その行為は悪だけれど、見た人は何か肩を持ってあげたくなる。悪い人じゃないけど、殺人者であるから悪人となる。
 金髪に凄い違和感を感じたけど、演技は断然良い。割と無口な感じの役で台詞は少ないけどその境遇やどうしようもない気持ちは演技で伝わってくる。方言も、自分はそっちの人ではないけど、しっかりしてるように思えた。


 清水と共に逃避行を続ける馬込光代。深津絵里。

深津

 とても真面目な女性。なんか今まで男と縁が無く、何かしらんが一念発起して出会い系にマジに健全な出会いを求めるという、間違った方向に勇気を出してしまった結果清水と出会ってしまった。もうちょっと早く出会っていたら……とも思ったけど、事件前に出会ってても清水に相手にされなかった気もする。タイミングが良いんだか悪いんだか。
 凄い良い。主演の妻夫木くんよりも良かったかもしれない。なんか見入ってしまう。生々しい感情を表現するのが凄い上手いと思った。

 物語の中盤からこの二人の逃避行が始まる。そういえば『マジックアワー』でもちょっとカップル演じたりしてて、色々わらかしてくれたこの二人ですが、当たり前だけど『マジックアワー』とは正反対で重々しくて息が詰まる逃避行。
 そこで清水が自分のしてしまった事を告白する、この映画のハイライトとも言うべきシーンがあるのだが、

告白シーン1
告白シーン2

 凄いよかった。空気を読まずに途中で料理持ってくる店員も笑
 苦しみながら吐き出す妻夫木も良いし、動揺する深津絵里も良い。自然と見入ってしまう。同時上映の『ヒーローショー』にも同じようなシーンがあるのだが、あっちは色々と問題がありすぎて、こっちの方が圧倒的に良い。当たり前だけども。

 特に色々な場所に行くわけでもなく、ある特定の場所に向かい、そこでどうにか生活しようとする、逃避行と言うにはは少し違うのかもしれないけど、やっぱり先に光見えないって言うのはとても苦しいね。どうしようもなさが凄い伝わってくる。見てて可哀相になってくる二人。自分が無理に連れまわしていた事にするために見せた清水の最後の優しさ(泣きながらキスをして首を絞める)とか、ありがちって言えばそうなんだけど、切ないというか、物悲しいものがある。
 

 周りを固める役者さんたちも凄い良かった。
 佳乃を山中に放置した調子の良い大学生、増尾。岡田将生。

 岡田

 格好付ける事にしか興味が無いと言うか、本当に調子こいてるダサい大学生。佳乃を車内から蹴飛ばして降ろして放置して帰っちゃうクソ野郎。下種ってこういう人の事言うんだろう。でも、こういう人本当にいそう笑 大学生がみんなこうなのかって言われたら絶対違うんだけども、一時期あったスーパーフリーの人とかこんな感じなんだと思う。

岡田外道

 かなり近くの人が死んでるのにそれを茶化して大騒ぎしちゃったりする。周りの友人もアホ。一人は良いヤツなんだけど。
 『告白』の方にも出てたけど、とても良い。ああいう熱血教師も、こういうダサい学生も、どっちも良かった。あっちはちょっと現実離れしたキャラクターで、こっちは生々しいキャラクターで、ある意味両極端。作品としての質もそんな感じあるかもしれない。


 清水に殺された石橋佳乃。満島ひかり。

福島

 被害者であるが、この人もこの人で援助交際はやるわ、むしろ金をガンガン要求するわ、終いには清水を脅す、殺されても仕方ないラインに踏み込んでた人。まぁいきなり増尾に蹴飛ばされて混乱してたって事もあるんだけど、こういう自分の事しか考えてない自分勝手過ぎる人ってのもいそう。下種とは言わないけど、クソだとは思う。
 自分は知らない役者さんだった。一緒に見に行った人曰く有名な人らしい。

 この二人は、人間の悪い部分を目立たせて描かれた誘導的なキャラクターだけど、本当にいそうで存在が生々しくて、ちょっと怖くなった。


 被害者、佳乃の父親、石橋佳男。榎本明。

榎本

 当日に佳乃と会ってて、色んな事に納得できなくて増尾に会いに行く。ただ、捜査が進めば携帯のメールから娘が援助交際やってたり金を要求してたりするのがわかっちゃうんだよね。
 いつも脇を固める榎本明だが、一番良かった。自分が今までに見てきた榎本明としても、この映画のキャラクターとしても。スパナを持って増尾に大切な人の事を語るシーンとかとても良い。


 加害者清水の育ての親であり祖母の房枝。樹木希林。

危機

 自分の孫が殺人者であることを上手く飲み込めず、マスコミに翻弄され混乱する祖母。この人が頭を下げるシーンは正解と言うか、それしかないと思った。『半落ち』ではこの人にもらい泣きして泣かされたんだが、今回もこの人に泣かされそうになった。
 『半落ち』『リターナー』『下妻物語』くらいでしか見てなかったので、久しぶりに映画で樹木希林を見た気がする。

 この二人は増尾と佳乃とは逆に、悪人に翻弄されてしまう善人として描かれているように思えた。二人とも本当に良い演技してる。主役二人と共に日本アカデミー賞の役者賞を独占するのもわからなくはない。

 ちょっとだけ出てくる、清水の母親役の徐貴美子も、思いっきりエゴを強調したキャラクターだったけど、よかった。

徐

 自分の実の息子を育てるのを放棄し、あまりにも酷いやり方で捨てといて祖母に「ほんと、良く育ててくれたよ」みたいな嫌味を平気で言える、無責任とかそういうのがわかってない、ちょっとおかしい人。こういう人もほんとたくさんいるよね。
 あれだけの登場シーンでこんなにも嫌なやつだってわからせるのは凄い笑


 ちなみに音楽も日本アカデミー賞を受賞してるんだけど、自分はこの映画での音楽が全然記憶に残っていない。役者たちに見入ってしまったのかもしれないが、久石譲らしさが全くわからなかった。他の作品では割と記憶に残る音楽ばかりつくってるんだけど、なんでだろう……


 監督の李相日。『青~chong~』『69 sixty nine』『スクラップ・ヘブン』『フラガール』と、『BORDER LINE』以外の作品は全部見てるんだけど、今回この作品で良くも悪くも青臭さが無くなったという印象を受けた。『悪人』が特にと言うだけなのかもしれないけど、すごいカッチリした感じ。まぁ良い役者、良い原作、良い作曲者、そして良い監督のこの作品だからカッチリするのは当たり前なのかもしれないけど、個人的には青臭さが好きだったから、この次の作品がどうなるのかとても気になる。一番好きなのは『スクラップ・ヘブン』なんですけどね。もうああいうのは撮れないんじゃないかとも思う。

 テーマみたいになってるある人が悪人か善人かと言う問題は、人類は善か悪か、性善説と性悪説どちらが正しいかと言うようなものに等しい無謀な議題であって、悪人の面もあり善人の面もあるとしか言えない。人間と言うのはある気持ち、ある感情、ある状態を永遠に保つ事のできない生き物であり、なおかつ頭が良く物凄い多種多様な考え方のできる生き物だから、悪の面と善の面は当たり前に混在する。さらに言えばその善とは何か?悪とは何か?人間の尺度で良いのか?など、様々な問題が出てくるので本当に難しい。行動に評価をつけるしかない。
 だから、一応この主人公清水は、その背景に何があろうともとにかく殺人を犯した人物であり、答えとしては悪人となってしまう。ラストに深津絵里が言うように、世間的には清水は悪人である。だが、この映画を見た人は清水を「悪人だ!」と非難する気にはきっとなれないだろうし、本当に悪人なのだろうか?と考えてしまう事もあると思う。それが狙いと言うか、何を以って悪人とするのか、何を以って悪とするのか考えさせる作品になっている。だから、脆弱な答えしか出せない問題と言うか、なんと言うか、人間の決める判断とか尺度って、立ち位置を変えたりするだけで簡単に変わる、本当に曖昧で不安定でわからない、難しいものなんだなぁって思う。でもそんな事わかりながらも社会としては尺度は決めなきゃならないからね。大変だ。

 あのとき清水が佳乃を殺さなかったら、どうなっていたんだろうとは考える。そんな起こってしまった事をあれこれ考えるのは時間の無駄なんだけど、冷静に考えると佳乃が「(清水に)レイプされた!」って警察に言っても、二人でいちゃいちゃしてる映像と金を要求してる佳乃のメールとか、携帯電話に残ってる佳乃に不利な部分がたくさんあるから清水は捕まらない気もするし、ほとぼり冷めたら自分の惨めさに気付いた佳乃は警察にそんなこと言わないとも考えられる。でも、清水はいきなりあんな事言われたら冷静な判断なんてできないだろうし……避けられない事件だったのかね?まぁ起こってしまったんだからどうしようもないんですけども。


 あと、あんまり顔がちゃんと写るシーンないんだけど松尾スズキが出てる。

松尾

 まさか詐欺師とは思わなかったぜ笑 まぁこの人もわかりやすく善人の皮を被ってる悪人と言うキャラ。うちの地元でもおじいさんおばあさんを大量に集めてたまになんかの講演会だか実演販売だかをやってるのを見かけるんだけど、大丈夫だろうか……?


 とりあえず見て損は無い作品だと思う。完成度も高い。何度も見たいとは思わなかったけど、邦画のドラマの最高峰だとは思う。


愛すべき名場面
○清水の告白シーン
○佳男が増尾を問い詰めるシーン
○佳男が増尾の飲み会に乱入するシーンとその後の永山くんのスパナ
○房枝がお金を取り返しに行くシーン
○房枝がマスコミに頭を下げるシーン
○清水が灯台で光代に一緒にいると辛い気持ちになると言う事を告白するシーン
○逮捕される直前の清水の光代絞殺未遂のシーン

愛すべき名台詞
○あんたには大切な人はおるね?その人の幸せな様子を思うだけで、自分まで嬉しくなるような人ですたい……アイツ(娘)にもおらんと思います。おらん人間が多すぎるのよ。今の世の中大切な人がおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、何でもできるとと思い込む。自分には失うものがなかっち、それで強うなった気になっとる。失うものもなければ欲しいものも無いだけんやろ。自分を余裕のある人間っち思い込んで失ったり欲しがったり、一喜一憂する人間を馬鹿にした目で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当は、それじゃ駄目とよ……
○俺は光代が思うとるような人間じゃなか

評価
★★★★☆
(★ 五つが最高。☆は0,5点)



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妻夫木 聡、深津絵里 他

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テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画

  1. 2011/05/08(日) 16:10:32|
  2. 映画-邦画
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