元々このブログを始めた目的は、自分が今まで見てきた映画をデータベース化したいというか、全部レビュー付けて個人的なランキングを作りたいって事だった。きっかけは、多分ここを見ている人の1人くらいは知ってるとは思うんですけど、googleで「ザ・ミッション」と検索すれば出てくる「愛すべき映画たち」と言うジョニー・トー監督作品をとても詳しく、面白いツボを押さえたレビューをしてくれているブログに触発されたからです。共感できてとても好きなブログなんで、内容が被らない様に頑張ります。
と言うことで今回は自分も敬愛するジョニー・トー監督(ジョニー・トゥ)の『ヒーロー・ネバー・ダイ~眞心英雄~』。このブログのタイトルにもある「愛すべき○○」。この映画こそ、自分の愛すべき映画の一つである。
思いっきりネタバレあるよ。
邦題『ヒーロー・ネバー・ダイ~眞心英雄~』
原題『眞心英雄 A Hero Never Dies』
1998/香港/97分
監督 ジョニー・トー
出演 レオン・ライ、ラウ・チンワン、フィオナ・リョン、ヨーヨー・モン、ラム・シュー
何か一つの事(特に社会の役に立たないような事)には精通していて、その事に関しては物凄い情熱もあるし、素晴らしい力も譲れない誇りも持っているけど、他の社交性とかがからっきしな哀愁漂う駄目人間。アホ。自分はそういう人間をボンクラと呼びます。敬意を込めて。愛を込めて。カッコイイし、ときには可愛いとさえ思える、愛すべき存在。ボンクラ。自分の語彙力では上手く的確に言い表すことができないけど、自分にとってそういう「ボンクラ」は悪口では無いのです。「漢」と書く方の男に近いニュアンス。
この映画はそういう「ボンクラ」の映画。「漢」の映画です。最高に格好良いボンクラ共の祭です笑 テーマソングはSUKIYAKI!
物語の説明はとりあえずDVDの裏に書かれているもの書きます。
反目を続ける暗黒街の二大組織は、それぞれ伝説的な殺し屋を雇い、互いにボスの首を狙っていた。ジャックはクールで凄腕の殺し屋として知られており、一方のチャウは豪放で雄弁な腕利きだった。タイを舞台に激化する二大組織の抗争は、思わぬ方向へと進み、二人の殺し屋たちに過酷な運命が襲い掛かる。黒社会組織の非常な裏切りと抗争。その中で生まれる男同士の奇妙な絆。二人の男は、それぞれの決意を胸に香港へ向かう。
レオン・ライ演じるジャック。
感情を表に出さないクールな殺し屋だが、その心はクールどころの騒ぎじゃない。物凄い熱い男だ。んでもって格好良すぎる!!『天使の涙』の殺し屋役のときと同等か、それ異常に格好良い!
ラウ・チンワン演じるチャウ。
テンガロンハットに葉巻、いかにも豪放磊落な感じのする殺し屋。何ていうか、格好良いという次元を超えた格好良さですよね。
ラウ・チンワンはこの作品を見る前にジェット・リーの『ブラック・マスク』って映画で見たことがある。そのときは刑事で、ジェット・リーと軽く柔道っぽいアクションをしたりしてて、そこ以外は特に興味がわかなかったが、まさかこんなに格好良い兄貴だったとは笑
実力は互いに認め合っているが、一見正反対に見えるこの二人。でも心というか、身体の中に秘めた魂みたいなものは同じ熱いものを持っていて、根本の部分で近しいと自分は思う。こいつらは「同類」なんでしょう。
映画はボトルから始まる。
JACKと秋(チャウ。その後の文字は「兄貴」とか「さん」の意)によってキープされたボトル。これは最期まで意味をもっているアイテム。見事というか完璧と言うかね。素晴らしいよ。
時は遡り、タイでの抗争時代。最初の抗争、ジャック側が勝利するが、銃撃戦が終わったと思ったらジャックの頭にレーザーサイトのポインターが。チャウが狙撃銃で狙っていたのだった。だが、撃たない。ジャックも撃たないことを知っているのか、気づいているのに何も無いようなそぶりでタバコを吸う。二人がただならぬ関係であること示唆するシーン。格好良い!
そこからの展開がマジでボンクラ!!笑
ジャックは腹いせにチャウの寝床を突き止めて銃で滅茶苦茶にして、お互いの知り合いであるおっちゃんを経由して口喧嘩。直接会って話をつけることになって、二人ともバーに赴くも、ちょうど同じときに車でバーに到着して、お互いに譲れずに真正面から激突!しかも激突してバックしてアクセル踏んで激突してまたバックして……
この意地の張り合い、お前ら子供か!!笑 そしてバーの中でも酒をぶっかけ、グラスをこぼし、コインでのグラス割りのゲームを始める。
酒をぶっかけられたジャック。ハンカチで拭きながらも一睨み。
これ格好良すぎだろ!!『スティング』見たときあまりにも格好良い青い目のポール・ニューマン見て「これは女が惚れるのは仕方が無い。ってか男でもこりゃ惚れる笑」とか思ったけど、このレオン・ライもやばいでしょ。
そして、飲もうとしたグラスをこぼされたチャウ。
台詞は無いけど「ほぉー、やんのかてめえ」みたいのが伝わってくる。イカス!
ってかバーのマスターとしちゃ思いっきり迷惑なわけで、お互いの女が酒を持ってきて、「どっちが良いものか選べ。選ばれなかったら殺す」みたいな事をチャウに言われて、ジャックも何も言わないけど目で「俺の選ばないと殺すぞ」と言ってて、マジかよってなってるマスターの顔。
可哀想!でも、このマスター、マジで良い奴です。映画見てればわかるはず。このときはチャウの彼女が「勿体無いから一本を今飲んで、一本は今度飲みましょう」と機転を利かせてくれて、一本はキープすることになって、伝説のボトルが生まれ、マスターの命も助かりました。
その後、再び抗争。今度はジャックとチャウは直接対決をし、お互いに撃たれても撃たれても撃ちまくり、重症を負ってしまう。しかも動けなくなったところをジャックが守ってたボスがチャウの足に何度も銃弾を撃ちこみ、ジャックをボコボコにする。このボス、最低だ!
鳩山さんにしか見えないんだけど最低だ!(^^;
重症を負うも命は助かったジャック。両足を切断することになってしまったチャウ。この二人を献身的に介護する二人の女。
ヨーヨー・モン演じるジャックの女。
フィオナ・リョン演じるチャウの女。
この映画の主役は男で、その男たちの復讐、友情なんかがメインなんですが、この二人の女性の愛も負けじと熱い。
ジャックがまだ昏睡状態のとき、敵対していた組織は和解し、必要のなくなった殺し屋、ジャックを始末するために刺客を送る。そのとき、ヨーヨー・モンは身を挺してジャックを守り、自分は全身火傷を負ってしまう。自分の容姿にだけは自信があって生きてきたこの女性にはそれは死ぬよりも辛い事だったのかもしれない。景色の綺麗な丘でジャックに「このままずっと夕日だけを見続けていたい。この願い、かなえてくれる?」と言いますが、ジャックは友と己の誇りのために香港に戻ることを決意します。
チャウの方は両足を切断され無気力状態に。刺客は送られてきませんが、組織のために戦ってこうなったのに援助もなく連絡も無視され、その組織の対応にフィオナ・リョンは怒り、香港に戻りボスに掛け合うが相手にされず、それでも諦めずに直訴するも怒ったボスに撃たれて、チャウの目の前で死んでしまいます。
二人とも涙さそう結末です(;_;)
ここでチャウ。女が殺されてまで黙ってたら漢じゃねえ!その女性の死をきっかけに、チャウの中に再び熱いものが覚醒し始める。両足を失いながらも移動手段を考え出し、身体を鍛えなおし、ボスへの復讐を始める。
一日中狙撃ポイントから動かず、やっと現われたボスに執念の狙撃を試みるが、一本の柱に銃弾は阻まれて失敗。チャウは撃たれ、行きつけのバーになんとか行き着くが、マスターに一杯の酒とSUKIYAKIをリクエストしたところで、あのボトルが目に入り、再び狙撃ポイントへ行き、狙撃を試みる!しかし、次にボスが現われたとき、銃を構えるチャウにはハエがたかる。チャウはすでに息絶えていた。その柱の少し横に照準を合わせながら……。
なんて格好良い死に様なんだろう……。でも、チャウの出番はまだ終わらない。
その後、バーでマスターがバンドにSUKIYAKIを早く覚えろ!と怒鳴っているところでSUKIYAKIをバックにジャックが帰還。
このシーン。この映画の中で、そして全ての映画の中で一番格好良いシーンなんじゃないだろうか?自分はそう思う。自分は結構涙もろくて感動系の映画でボロボロ泣いてしまうタイプだが、このときばかりは格好良すぎて涙が出た。マジで。格好良すぎて泣いた映画なんてこれが初めてで、後にも先にも無いです。
そして事情を聞いたジャックが以前の部下だった組織の人間に電話したときの台詞
「今夜チャウと暴れる」
熱い!見た目クールなのに滅茶苦茶熱い!!
たぶん電話したのはこの人
チャウ側の部下なんですけど、二人の旧友だったのかな?ボスにボコボコ殴られて不満だらけだったはず。目の前で組織のために戦ったチャウの女の最後も見ちゃってるしね。
そしてジャックとチャウは組織のボスのところへカチコミ。
あの格好で車椅子に乗せられ、銃を握らされてジャックと共に行くチャウ。荒々しくも華麗な銃撃戦が始まる。
ジョニー・トー監督自身のこれ以降の作品、『ザ・ミッション』や『エグザイル絆』などと比べればこの銃撃戦は少し雑かなとも思うけど、レオン・ライの華麗な魅力とラウ・チンワンの荒々しい魅力でカバーしていると自分は思う。
ボス二人は悪運強く最後の方まで生き延びているのだが、まず何発も銃弾を食らいながらも追ってくるジャックに追い詰められて逃げて
追い詰められた先にいたチャウにも追い詰められて、また逃げる
こいつら良い気味だ笑
死んでいるけど、チャウは死なない!英雄は死なないんだよ!
そして最後、ジャックは自分のボスには自分で落とし前をつけ、チャウのボスにはチャウに落とし前をつけさせて、そして崩れる。熱い!!!このときの表情も凄い良いよなぁ。
なんとも激しくて華麗な最後。二人は伝説となった。
その後のマスターのボトルにまつわるエピソードも本当に良い。完璧な終わり方だと思う。まさにHero Never Dies。
ちなみにチャウ側のボスはこんな顔。
そしてジョニー・トー作品の常連、ラム・シューは今回ジャックの部下で、中盤の銃撃戦でチャウに殺されてしまう役。
なんでかレオン・ライもラム・シューも含め、皆で連れションしてた笑
どこでのロケかはわからないけど最初の方のタイでのシーンとか、カメラのせいだと思うんだけど、一部映像の質感が変なところがあった。が、そんなことどうでも良くなるくらい素晴らしい映画。これでもかというくらいのボンクラ映画。愛すべき映画。男だけでなく、女の人も楽しめると自分は思うんだけど、どうだろう……確かに女性の扱いが悪いかな。
名作の多いジョニー・トー作品の中でも、この作品が一番好きです。愛してます笑
愛すべき名場面
○車激突の意地の張り合い。
○グラス割りゲーム。
○チャウの最期。
○ジャックの最期。
○ラストのマスターと伝説のボトルのエピソード。
愛すべき名台詞
○今夜チャウと暴れる
評価
★★★★★
(★ 五つが最高。☆は0,5点)
予告編↓
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テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画
- 2010/04/22(木) 14:00:35|
- 映画-香港
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| コメント:2
確かにあらためて見るとボスはどこぞのルーピーに似てるw
トーさんのノワールものの中では異色なくらい女性が活躍する映画だけど扱いもまた悲惨だよね
女性はどう観るんだろうこの映画
個人的にはやり過ぎな展開や演出がバカバカしいんだけどそこを力技で突き抜けてしまって感動してしまうんだよなあ
近年のジョニー・トーは香港映画界から独自の進化を遂げ過ぎてしまってこういう香港的なバカバカしさみたいなものが無くなってきているような気がするのがちょっと寂しくもある
進化の行く末も気になるけどたまには原点にも帰ってもらいたいかな
- 2010/04/22(木) 23:36:00 |
- URL |
- かと #-
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自分も改めて見直したとき、この人アメリカからルーピー呼ばわりされてる人にそっくりだってびっくりしましたよww
実際自分の国の首相が馬鹿呼ばわりされてるのはマジで悲しいですけど……。早く辞め(ry
そういえば女性が活躍する方ですよね。『ザ・ミッション』は重要人物ですけど、いるだけですし、『エグザイル絆』でも重要人物ですが、守る存在であって、この映画みたいに女性に守られたりはしてなかった。この映画は女性自ら行動するし、末路はあれですけど格好良いし、良いと思うんですけどね。カーリーなんかは「良かった!」と言ってました。
確かにやり過ぎ!特にラウ・チンワンの車椅子、しかも撃たれて動いちゃう!だがそこが良い笑
ほんと力技ですよね。力で最期まで打ち抜いた印象があります。もしこれ120分とかやってたら途中力尽きてたかもしれませんけど。尺も合ってるんでしょう。
最近の香港映画は覚えてるところだと『インビジブル・ターゲット』とか『インファナル・ディパーデット』とか、ジョニー・トーで言えば『スリ』くらいなんですけど、ジョニー・トーに限らず、全部小奇麗になりましたよね。それはそれで面白いんですけど、香港映画特有の泥臭さ、小汚さみたいのが無くなったと言うか、『インファナル・アフェア』辺りからだと思います。時代の流れと言ってしまえば仕方ないですけど。自分も寂しいです。
まだ見てないヤム・ナウホイの『天使の眼、野獣の街』とかジョニー・トー先生の『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を(復仇)』とかは期待しているんですけども。
- 2010/04/23(金) 08:57:53 |
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- 成川ジロー #-
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